歯並びはどうやって決まるの❓④(乳歯の隙間、乳歯のムシ歯)

こんにちは。仙台市若林区おろしまち歯科医院 臼井です。

これまで3回にわたって歯並びはどの様に決まるのか、歯並びを悪くする要因にはどのような事があるのかという事についてお話してきました。

「歯並びはどうやって決まるの❓①(永久歯のできる時期)」

「歯並びはどうやって決まるの❓②(指しゃぶり)」

「歯並びはどうやって決まるの❓③(口腔習癖・悪習癖)」

 

歯並びは、これまで挙げてきた要因の他にも、さらに様々なことが要因となり影響を受けて決まります。

今回は、その中でも影響の大きい<隙間>と<ムシ歯>のお話です。

 

乳歯の間が隙間になっているけど大丈夫❓

 

乳歯が生えそろったお子さんの歯並びをみてみると、思ったよりも歯と歯の間に隙間が開いていて、将来大人の歯に生え変わっても<すきっ歯>になってしまうのではないか?と心配されるかもいらっしゃるかもしれません。

実は、乳歯が生えそろった歯列においては、元々ある程度の隙間がある事が望ましいのです。

1) <霊長空隙>

前から3本目の乳犬歯(C)の周囲にある隙間。

上の歯では、乳犬歯(C)の手前側(近心)に、下の歯では、奥側(遠心)にできる隙間です。

この隙間は、乳歯列が生えそろった段階でみられ、ヒトやサルなど霊長類に特徴的にみられるため<霊長空隙>と呼ばれます。

 

2) <発育空隙>

4〜5歳になると、乳歯の前歯(乳前歯)に見られるようになる隙間。

以前のブログでもお話ししたように、歯冠の大きさは一度完成した時点から変わりません。これは、乳歯においても同じ事が言えます。それに対して、顎の大きさは身体の成長に伴って大きくなります。

その差が4〜5歳頃になると、乳歯の隙間として現れるのです。

成長に伴って生じる隙間という事で、<発育空隙>あるいは<成長空隙>と呼ばれます。

少しずつ均等に隙間が大きくなってきている時には、しっかりと顎が成長してきているんだな~。とお子さんの成長を感じてください

これら(1)(2)の隙間は、乳歯よりも大きい永久歯が生えてくるために必要なスペースであり、逆に隙間が無いと永久歯が生えてくるスペースが足りないため、傾斜したり、回転して生えてくる可能性が高くなります。

 

つまり、歯並びが悪くなる可能性が高いのは、乳歯がすきっ歯になっている場合よりも、乳歯に隙間が無い場合なんですね。

 

乳歯が虫歯になると歯並びに影響するの❓

 

先ほど、乳歯よりも永久歯が大きいと書きましたが、実は、すべての乳歯の幅(歯冠幅径)が永久歯よりも小さいわけではありません。

前歯から数えて3,4,5本目の歯。

乳歯列では、C(乳犬歯)、D)(第一乳臼歯)、E)(第二乳臼歯)。永久歯列では3番(犬歯),4番(第一小臼歯),5番(第二小臼歯)。

これらの歯冠の幅を合計すると、<C+D+E>の方が、<3+4+5>よりも大きいのです。

その<C+D+E>の幅と、<3+4+5>の幅の差を<リーウェイスペース>と言います。

その幅の差は、上顎で1mm、下顎で3mm程度と言われています。

思ったよりも大きいですよね。

このリーウェイスペースが確保されていることで、永久歯の3,4,5本目の歯がスムーズに生えてくることができます。

どうしてそうなっているのかは、人体の不思議なところで、非常に上手く出来ているんですね~。

そんな上手く出来ているリーウェイスペースを失くしてしまう原因の一つが、<乳歯のムシ歯>です。

特に隣の歯との間(隣接面)に穴が開いてしまったムシ歯を放置すると、歯が傾いたり、移動したりする可能性があります。

特にDとEの間は、リーウェイスペースを確保する役割がありながら、ムシ歯になりやすい部位でもあるのです。

そのため、乳歯のムシ歯は永久歯に比べて進行が速いので、早期に発見して治療をすることが望ましいのですが、このDE間のムシ歯は、レントゲンを撮ってみないと早期の段階で見つける事が難しい部位でもあります。

残念ながらムシ歯になってしまった経験のあるお子さんは、定期的にレントゲンを撮って確認しておくことが大切です。

 

さらに、ムシ歯が大きく進行してしまい、神経が死んで根の先までムシ歯の原因菌が入り込んでしまった時には、根の先に膿がたまってしまう場合も。

そうなると、そのすぐ下でまさに形成途中である永久歯の歯冠が歯茎の中ですでにムシ歯の原因菌に感染してしまうことにもつながります。

また、これも人体の不思議ですが、通常、乳歯の後に生えてくる永久歯は、乳歯の根っこをめがけて生えてこようとします。乳歯には後に生えてくる永久歯(後続永久歯)が正しい場所に生えてくるように誘導し、生えてくるためのスペースを確保する働きがあるのです。

誘導してくれる乳歯を虫歯などで早期に失ってしまうと、それに続くはずの永久歯は迷走し、思わぬ方向に生えてきてしまうことがあります。

 

先ほどお話しした根の先まで細菌が入り込んでしまった乳歯の場合には、続く永久歯が乳歯の根の先にある細菌を避けるようにそっぽを向いてしまいます。

しかし、適切にできるだけ早く乳歯の根の治療(根管治療)を行うことで、細菌を減らすことができると、永久歯はまた元の様に乳歯を目がけて正常な方向に戻ります。

 

「乳歯は生え変わるから痛がらなければムシ歯も様子を見て大丈夫。」

と今まで考えていた保護者の方がこのブログを見て、

「あ、そうじゃないんだ⁉」

と気づいて頂けたら幸いです。

「うちの子虫歯になっているかもしれないな~。歯医者に連れて行った方がいいのは分かってるけど、忙しいからもう少し先でもいいかな。」

と今、考えていた保護者の方が

「え❗️大人の歯の歯並びにまで影響するの❓それなら早めに一度見てもらってから、予定を考えよう。」

とご理解いただけたら、なお幸いです。

 

永久歯に影響を及ぼす要因について4回に渡ってお話してきましたが、実は永久歯の歯並びはさらに沢山の要因によって、良くも悪くもなりえます。

 

いつかまた、本ブログでそのあたりについても、お話できればと思っています。