親知らずは抜いた方がいいの❓②

こんにちは。仙台市若林区おろしまち歯科医院 臼井です。

「親知らずは抜いた方がいいの❓①」

からの続きです。

親知らずの問題点について、

1)むし歯になりやすい

2)周りの歯肉に炎症が生じやすい

3)挺出が生じて歯ぐきを噛むようになることがある

4)埋まっている親知らずの生えようとする力が原因で様々な問題が生じる

親知らずを抜いた方がいいと判断される原因には上記の1)〜4)が考えられることを前回お伝えしました。

今回は、4)についてのお話と、結局親知らずは抜いた方がいいのかどうかという点について。

歯は完全に生えたら、むし歯や歯周病にならない限りそのまま動いていないように見えますが、

実は生えてからも、さらに生えよう生えようとする力が働いています

これは、前回3)の挺出が生じる原因だもお話ししましたが、親知らずに限らず全ての歯について同じ事が言えます。

さらにこの力は、真っ直ぐに生えてきた親知らずだけではなく、斜めに半分埋まっている親知らずや、真横に完全に埋まっている親知らずでも働いているのです。

つまり、斜めや横向きに埋まっている親知らずは動いていないのではなく、隣の歯に抑えられて動けないだけの状態。

では動くことはできなくても、親知らずの生えようとする力が働いているとどうなるのでしょうか。

その力は、隣の歯(第二大臼歯)をグイグイと押し続けます。その結果、

4)−1 歯並びが悪くなる

左右両側に横向きに親知らずが埋まっている場合には、左右からあたかも万力で歯列を押しつぶすような力が加わり続けることになり、比較的歯根の細い下の前歯や小臼歯が、歯並びから押し出され、徐々に歯並びが悪くなってくることも起こり得ます。

大人になってから、数年前と比べて下の前歯の歯並びが変化してきた様に感じる時には、歯周病による歯の動揺などが生じていないかを確認すると共に、埋まっている親知らずがないかパノラマレントゲン写真を撮影して確認してみることも大切です。

 

4)−2 押されている隣の歯の歯根が溶けてしまう(歯根吸収、外部吸収)

乳歯から永久歯に生え変わる時、乳歯の歯根は、続いて生えてくる永久歯が生えようとする力に押されて少しずつ溶けて(歯根吸収)やがて抜け落ちます。

約10%の方で見られる、乳歯に続く永久歯が元々作られない先天性欠如の場合には、永久歯に押される力が生じないため乳歯の歯根も吸収することなくそのまま残り、抜け落ちずに他の永久歯と同じように残っていくことになります。

(永久歯のように一生残せるかというと、様々な要因で長くても40代までには抜けるもしくは抜く必要性が生じてしまいますが、詳しくはまたの機会にお話しします。)

つまり、歯根は外から力が加わり続けると、溶けてしまう性質があるということで、これは乳歯だけではなく永久歯でも同じことが言えるのです。

ただし、親知らずが隣の第二大臼歯をグイグイ押している感覚というのは、日常でハッキリと感じられる程ではないため、完全に埋まっている親知らずの場合には、親知らずがあることも気が付かないうちに手前の歯の根元から歯根にかけての吸収が進み、違和感を感じる様になった時には、手前の歯の神経を取らないと歯を残すことが難しい状態にまで進行しているケースも少なくありません。

以上の様に、親知らずが原因で起こるお口の中でのトラブルは色々あり、さらに1)〜4)の問題が単独ではなく、いくつか同時に生じていることが多く見られます。

これらの問題が生じてしまっている、もしくは問題が生じる可能性が高いと思われる親知らずは、早めに抜いた方がいいと思われます。

しかし、親知らずだからといって全てすぐに抜かなくてはいけないかということ、そういう訳でもありません。

1)〜4)の問題がない場合、つまり他の永久歯と同じ様に真っ直ぐに生えていて歯並びに参加できている場合や、多少斜めに生えていても歯ブラシがしっかりと届いてブラッシングが行き届いているなど、そのまま残していける親知らずもあります。

いずれにしても、ご自身でそれを判断することは難しく、やはり定期的に歯科を受診して、いずれ問題が生じた時や、残しておくことでデメリットが生じている様になったら、速やかに抜いてもらう状態を整えておくことが大切であると言えます。

他の永久歯を抜かなくてはいけなくなった際に、抜いた部位に親知らずを移植する再植という治療法もありますが、その為には、親知らずを問題がない状態で残しておくことが必要です。いつか再植をするために親知らずを残しておくことで、先の1)〜4)の様な問題が生じてしまうことは、かえって口腔内全体の問題を大きくしてしまうことにもなりかねません。

親知らずも含めて、ご自身のお口の中の状態が現在どの様な状態であるのかを、常に把握できることが定期的に歯科を受診していただく大きなメリットであることを知っていただければ幸いです。