こんにちは。仙台市若林区おろしまち歯科医院 臼井です。
歯科診療には健康保険が適用される保険診療と、適用されない自由診療があります。
健康保険が適用できる診療については、定期的に毎年見直しが行われており、2年毎には、新たな治療や材料が保険適用になるなど、大きな改定が行われています。
例えば、これまでの保険改定においては、
それまで保険では金属の詰め物しか作れなかった部位の治療に、金属以外の白い(歯に近い色の樹脂の材料)の詰め物や被せ物が作れるようになったり、
歯周病を治療するだけでなく、その後のケア、管理を保険適用で定期的に行うことができるようになったり、
といったことが挙げられます。
2024年の保険改定では、これまで以上にむし歯や歯周病などお口に関わる疾患だけではなく、「噛む」「飲み込む」「喋る」などお口の機能について、維持、改善をしていくことを保険が適用できる方法で行うことができるようになりました。
そこで今後、皆さんもよく聞くことになると思われる病名が「口腔機能低下症」です。
「口腔機能低下症」は、文字通り「口腔機能」が低下する疾患ということ。
どのような状態、症状があると「口腔機能低下症」であると診断されるの❓
「口腔機能」つまり口の働きの中で、最も大きな2つは「食べ物を食べる」「言葉を話す」こと。
一言で「食べる」と言っても、その中には、
「捕食」(食べ物を口の中に入れて捕らえておく)
「咀嚼(そしゃく)」(食べ物を噛み砕く)
「味覚」(味わう)
「食塊形成(しょっかいけいせい)」(食べ物を飲み込めように形作る)
「消化」(唾液の作用による最初の大まかな消化)
「嚥下(えんげ)」(飲み込むこと)
などなど、口が果たしている機能は非常にたくさんあります。
健康な状態では、それらの機能をあまり意識することなく一連の流れとして行なっています。
「言葉を話す」時には、
唇や舌の動きや、力、柔軟性、歯並びや残っている歯の数だけでなく、口の乾燥状態(唾液の量)、入れ歯や被せ物の状態などが、複雑に影響しあっています。
これらの内のどれか、もしくは幾つかに問題が生じたことによって、「食べたり」「話したり」する機能が低下した状態が「口腔機能低下症」ということになります。
「口腔機能」が低下するというと、
加齢に伴い、「噛む力が弱くなる」「唾液が少なくなる」「唇の力が弱くなる」などが生じることで、
「ものが噛めない」「食べこぼしてしまう」「言葉が聞き取りづらくなる」「滑舌が悪くなる」
といった症状がみられるようになることはイメージしやすいかもしれません。
しかし、「口腔機能」の低下には、加齢だけではない様々な原因が考えられます。
わかりやすい例としては、
・むし歯や歯周病で何本かの歯を失ったことで、食べることが困難になっている。
・全身的な疾患や飲んでいる薬の影響で、唾液が少なくなることでお口の中が乾燥して、飲み込みづらい。
など。
こういった「口腔機能」の低下を自覚した場合には、歯科医院で検査することが必要です。
また、そのような症状が生じる前に、それらの機能の低下を早期に発見し、対処しておくことで機能の低下を食い止めていくことが、健康寿命を延ばしていく上でとても大切であることも分かってきました。
その検査、診断、改善、経過管理について保険適用できるようになったことで、「口腔機能低下症」を食い止めたり、改善を目指すことが、むし歯や歯周病についてのフォローに加えて、かかりつけ歯科医院として皆さんの全身的な健康を保つことにつながっていくことと思います。
次回、具体的に歯科医院で、「口腔機能低下症」について、どのような検査を行うのか、もう少し具体的にお話しさせて頂きます。