むし歯と梨❓

こんにちは。仙台市若林区おろしまち歯科医院 臼井です。

時々天気のいい日にはウォーキングというほど一生懸命ではないものの、ブラブラと散歩をする事があります。

そんな時は、音楽を聴いたりラジオやポッドキャストを聴いたりしているのですが、最近は落語を聴きながらコースも決めずに歩くことも多いです。

とはいえ、落語に詳しいわけでもないので誰かの何かを聴くのではなく、音楽アプリで<落語>で検索して出てきた噺をただ流れてくるままに聴いているのですが、

そんな中で、主題ではないもののむし歯の話が出てくる演目がありました。

「佃祭」

落語好きな方にはお馴染みの古典なのかもしれませんが、興味のある方は聴いてみてください。

話は、いい事をしているといずれ自分に返ってくる、情けは人の為ならずといった内容ですが、江戸時代のむし歯に対する対処法が最後のオチ(落語では下げと言うそうですね)に使われているんです。

調べてみると江戸時代は、むし歯を削って治すという方法はまだ無くて、悪くなったら歯を抜く<歯抜師>という職業があったそうです。

なかなかにワイルドですが、西洋から歯の治療法が日本に伝わったのが幕末、開国した頃のようなので江戸時代までは歯は悪くなったら抜くしかなかったのも仕方ありません。

しかし、歯抜師に歯を抜いてもらうのも、誰でも気軽に頼める金額ではなかったそうです。

そんなわけで、庶民の間で広まっていた、歯が痛くて辛い時に行われていた解決法が、現在の長野市戸隠にある九頭竜大神を祀る<戸隠神社>にお参りすること。

戸隠神社に梨をたって(禁梨)お参りすると、歯が治ると言われていたそうで、

直接戸隠神社までお参りに行けない場合でも、梨の実に<右上の奥から二番目の歯>など傷んでいる歯の部位を書いて、神社の方向にお参りをして、川にその梨の実を流す事で歯の痛みが治ると信じられていたそうです。

その頃は、梨を食べるとむし歯になるとも考えられていたようなので、そうした願掛けが生まれたのかもしれませんね。

実際には、梨にはソルビトールという、キシリトールと同じ糖アルコールが含まれていて、むしろむし歯を抑制する効果があるとのことです。

天動説と地動説もそうですが、それまで常識だった事が実は真逆であった事が後に判明することは、これまでの歴史の中でも少なくない事を考えると、

歯科治療もその時々で新しい考え方や方法を、どんどん更新していくことが大事だなぁ。と落語を聞きながらブラブラ歩いて改めて感じた秋の1日でした。