こんにちは。仙台市若林区おろしまち歯科医院 歯科医の臼井です。
ムシ歯についてのお話が続きます。
●ムシ歯のハナシ①は→こちら
●ムシ歯のハナシ②は→こちら
今回もまず、
ムシ歯とは、
「ムシ歯の原因菌が、糖を分解して出す酸によって歯が溶かされてしまう病気です」
と前置きした上で、
前回の「ムシ歯のハナシ②」でお話したムシ歯になる3つの要素を3つの輪で表した
「カイスの輪」
「細菌」
「糖」
「宿主要因」
今回はその中から「細菌」について、もう少し詳しくお話を。
ムシ歯の原因となる「ムシ歯菌」
歯磨きでこの「ムシ歯菌」を減らしていけば「ムシ歯」は予防することができます。
と、言いたいところですが、
なかなかそう簡単にはいかないのがムシ歯の厄介なところでもあります。
「ムシ歯菌、ムシ歯菌」と言ってはおりますが、
実は1種類の特定の菌を指しているのではなく、何種類もいるムシ歯の原因となり得る菌をまとめて「ムシ歯菌(う蝕病原細菌)」と呼んでいます。
最近、「腸内フローラ」という言葉を耳にすることも増えてきましたが、
これは腸の中の細菌叢(さいきんそう)、つまり、腸の中にどのような種類の細菌がそれぞれどの位の割合(勢力)で存在しているのか。ということです。
「腸内フローラ」が改善した。
は、
「腸の中で体に有用な善玉菌が、何かしら悪さをする悪玉菌よりも多い状態で細菌同士のバランスが取れている状態になった。」
ということ。
そして、実はお口の中にも、腸と同じ様にたくさんの細菌が存在しています。
その種類は
約700種類!
これだけの種類の細菌が皆さんのお口の中(もちろん私もですが)に常に存在しているそうです。
そういわれても、あまりピンとは来ないですよね😅
ですが、確実にお口の中には多種多様な細菌が「口腔内フローラ(口腔内細菌叢)」を形成して暮らしています。
このように、口腔内や腸内に常に存在している細菌を「常在菌」と呼びますが、
ムシ歯や、歯周病の原因となる細菌も、この「常在菌」の中にいるのです。
「常在菌」は、身体のどこにでも存在し、健康な状態では特に悪さをしない細菌を指します。
むしろ、これらの細菌たちがいなければ、健康を保つことが出来ない面もあるとも考えられています。
しかし、何かのきっかけで、細菌同士のバランスが崩れて、特定の細菌の数が莫大に増えてしまったとき、身体にとって有害な作用が生じてしまう事があります。それが常在菌が原因となる病気です。
腸もお口も細菌のバランス(フローラ)が崩れたときに、何かしらの不調につながるんですね。
また、善玉菌、悪玉菌は根っからの良い菌、悪い菌というわけではなく、ある視点から見ると良い効果をもたらす菌、困った作用を及ぼす菌というのも興味深いところなんです。
腸では善玉菌の代表なのに、お口の中ではムシ歯に関与する悪玉菌とも言えるのが乳酸菌。
以前はムシ歯の原因菌とも考えられていましたが、最近の研究で健康な歯をムシ歯にする程の悪さはしていない可能性が高い事が分かっています。
なので、ヨーグルトを食べていたらムシ歯になりますよ〜。というわけではないので誤解しないでくださいね。
しかし、ムシ歯になっている歯のう窩 (ムシ歯の穴) にいる細菌を調べてみると、他の細菌と一緒に乳酸菌が見つかる事が多い事も昔から知られています。
そこで、今では乳酸菌はムシ歯が大きく進行する事に関与している可能性が高いと考えられ、更に研究が進められています。
また、ムシ歯の原因菌として、最も力を発揮するのがミュータンス菌。
ところが、このミュータンス菌が歯周病の原因菌の増殖を防いでくれている面もあるそうです。
ただし、ミュータンス菌は乳酸菌と違って、明らかにムシ歯を作る力が強いので、お口の中では増えて欲しくない細菌です。
こういった細菌が常に700種類も存在している口腔内。
一度出来た細菌同士のバランス(フローラ)は、なかなか崩れにくいものでもあるそうです。
ということで、最もムシ歯の原因となりやすいミュータンス菌が少ない口腔内フローラを作る事でムシ歯になりにくいお口の環境を目指しましょう❗️
「感染の窓」
がキーワードとなるその辺りのお話を次回お伝えします☝️